顎が正常に動作しないことも、子どもの歯並びを悪くする原因
子どもの歯を矯正する場合は顎の成長にも着目します。
それは顎が正常に働かないことが歯並びを悪くする一因になるからです。
歯並びと顎の働きにはどのような関係があるのか。また、顎はどのような仕組みで動くのか、歯科矯正の観点から解説します。
目次
物を噛む際には大きな力が作用する
私たちにとって毎日の食事は欠かせないものです。そして食べ物を噛む際には、奥歯でおおよそ10~20㎏という大きな力が掛かっているとされます。顎が正常に動作していれば、負担にはなりませんが、動作に不具合があるとどこかに余計な負荷が掛かります。それが、毎度繰り返されるため、さまざまな問題が生じるようになるわけです。
顎の構造は和ばさみと似ている
歯並びが悪くなるのもそのうちの一つですが、顎が正常に働かないと、どうして歯並びに影響を及ぼすのか。まずは、顎の動作の仕組みからお話したいと思います。顎の関節は和ばさみの作りと似ていて、和ばさみの支点、曲がった部分が顎の関節にあたります。和ばさみを手で握って力を加える力点が、顎でいうと筋力を使う箇所。作用点である刃の部分が、歯の部分に相当します。そして、この構造は、支点に力が掛からないという特徴を持ちます。
一方、和ばさみと歯では構造がまったく異なる点もあります。和ばさみの刃は片方だけを前後にずらしては動かせず、歯は下あごのみを突き出したり、左右に動かしたりできます。これは顎の関節円板の働きで、顎の複雑な動きを可能としています。
子どもの顎の関節と歯並びの関係
これら顎の関節に不具合が生じ、顎が正しく動かなくなると、顎の筋肉のバランスが崩れ、やがて噛み合わせや歯並びを悪くする可能性が出てきます。
逆に、歯並びが顎の関節に負担を掛けるとも言えます。歯並びが良ければ、上の歯と下の歯がしっかり噛み合います。ところが、例えば顎が小さく歯が生えるスペースが足らずに歯並びが悪くなると、上下の歯が噛み合わなくなります。すると、噛んだ時にどこかの歯だけ顎の関節に余計な負荷が掛かってしまいます。
このように顎と歯はお互いに作用しており、どちらかが正常でないと、もう一方に悪い影響を与えてしまうものなのです。子どもの矯正において、歯科医師が顎の成長に着目するのはそういった理由からなのですね。